一般社団法人配管技術研究協会

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 創立50 周年記念
続 配管技術者のための洋参考書
西野悠司 
協会創立45周年記念誌において、「配管技術者のための和・洋参考書100冊」を掲載したが、その後、入手した洋書の中から、お奨めできる良書と思われるものをここに紹介する。これら洋書は、インターネットの amazon.com 及び amazon.jp.com により、または、東京駅から歩いて数分の丸善本店(丸の内側)及び八重洲ブックセンタなどで入手できる。この中の何冊かは県立川崎図書館で閲覧できる。
補足説明【NPSとDN】
いずれもパイプの呼び径であることを表す表示記号で、数字の後は無次元で表す。
NPSはインチ系のパイプ(バルブ)の呼び径(nominal pipe size から来ている)で、日本では、B表示に相当する。
DNはmm系のパイプ(バルブ)の呼び径(nominal diameter から来ている)で、日本では、A表示に相当する。以下に例を示す。
  インチ系表示 mm系表示
米国、他 NPS 3/4 DN20
日本 3/4B 20A
書名:Pipe Stress Engineering Liang-Chuan(LC) Peng、Tsen-Loong(Alvin)Peng著 ASME Press 2009年刊
Pipe Stress Engineering
最近は計算をcomputerに頼りきり、考えなくても答が動的に出てくる時代であるから、物の理を考えなくなってきている。これは非常に危うい。ComputerのO/P をレビューするには、物の理が分かっていることが必要である。本書は、配管に生じる様々な応力や荷重に関する工学的原理と解析の基礎を網羅、やさしく丁寧に解説している。又、ASMEのPressure Vessel codeやPiping cod の解説書としても優れ、これらcodeをより深く理解することができる。本書は、特にお奨めの1冊である。
書名:Internal Flow Systems 2nd edition D.S.Miller著 Miller Inovations出版 1991年刊
Internal Flow Systems 2nd edition
配管の圧力損失を計算するための実用の書である。日本も外国も、圧力損失計算の実務に使えるオリジナルの技術書は非常に少ない。外国では、本書と次に出てくるCrane社の Flow of Fluids、そして、I.E.Idelchic著 Handbook of Hydraulics Resistance第3版(45周年記念誌参照)、そして日本では、日本機械学会の 管路・ダクトの流体抵抗 ぐらいのものであろう。本書は、流体解析ソフト“Flowmaster”の拠り所でもある。Crane社の本に比較すると、データが広範囲に及び、よりきめ細かい計算が可能のように思われる。
書名:Flow of Fluids Through Valves, Fittings, and Pipe 2009年版
     Piping System Fundametals 2000年発行 いずれも、Crane社発行
Flow of Fluids Through Valves, Fittings, and Pipe
Flow of Fluidは圧力損失の技術文献では、日本の企業で最もpopularなものと思われる。1935年にその原形が発行されて以来、1976年に計算方法の大きな変更があって以来、小刻みな改良がなされてきたが、2009年版は30数年ぶりの大幅改定が行われた。全体に、計算用チャートなどが、より見やすくなり、今まで大雑把であった分岐管の圧損が適格に行えるようになった。もう1 冊の方はFlow of Fluid のサブテキストのようなものである。いずれの本もインチ系とメートル系の2種類が準備されている。
書名:Pipimg Systems Manual Brian Silowash,PE McGraw Hill社発行 2010年刊
Pipimg Systems Manual
配管技術者に必要なエンジニアリングと知識全般を一通り説明した、実践的入門書。内容は、B31シリーズの配管codeと主な強度計算、ASME,ANSIなどの標準の紹介、主な使用材料、管継手。弁・スペシャルティ、管支持装置、配管製図、圧力損失計算とポンプ選定、プロジェクトに必要なドキュメント、仕様書、現場作業と起動、起きるトラブル、など幅広い。図、写真、例題も豊富。ところどころ、著者の経験からのアドバイスがところどころ見受けられる。
本書は県立川崎図書館に所蔵されている。
書名:Practical Plant Failure Analysis Neville W. Sachs, P.E 2007年刊
Practical Plant Failure Analysis
「機械の不具合を理解し、機器の信頼性を改善するガイド」という副題がある。Analysisと言っても数式は一つもない。始めの2章で破壊分析の基本を、後の6章で代表事例に共通する破壊メカニズムにつき解説する。破壊解析の要点に続いて、過負荷、疲労破壊の基礎、様々な疲労、腐食の理解、潤滑と摩耗、玉軸受、歯車、締結部品の破損、のRCA(根本原因解析法)につき解説している。
書名:Troubleshooting Process Operations 4th edition, Norman P. Lieberman著 2009年刊
Troubleshooting Process Operations
初版は1980年で、2009年刊の本書は第4版。著者は45年間石油精製のプロセスエンジアとして活躍後、トラブルシューティングセミナーで多くのエンジニアを育てた。本書は、著者が遭遇したトラブルをいかなる過程をたどって原因を探り、状況に最も適した処置をとったかを、多くの事例により解説している。石油精製や化学プラントに従事している人なら英語もそう苦にならず読み進められると思う。序文の最後で、「トラブルシューティングのコンサルタントは監督者よりもバルブをまわす人に聞いてみるべきであり、答えはオフィスではなく現場にある。」と言っている。本書は県立川崎図書館に所蔵されている。
書名:Hydraulic and Pneumatics A Technicians and Engineer’s Guide 3rd edi. Andrew Parr BH社 2011年刊
Hydraulic and Pneumatics A Technicians and Engineer’s Guide
液体(油、水)と気体の圧力利用の原理とそれを利用した様々な油圧・空圧機器のメカニズムを、初級の技術者(設計・現場とも)向けに、式は全く使わず、多数の分かりやすい図(文章より図の方が多い)を使い説明していて、とりつき易い本である。
取り上げられている機器とその周辺の技術は、ポンプ、コンプレッサ、調節弁、駆動装置、装置附属品、プロセス制御装置、シーケンス、などである。
238頁。本書は県立川崎図書館に所蔵されている。
書名:Process Equipment Malfunctions Techniques to Idedntify and Correct Plant Problems
Norman P.Liebernan McGraw Hill社発行 2011年刊                         
Process Equipment Malfunctions Techniques to Idedntify and Correct Plant Problems
プラントのオペレータ、プロセス技術者向けに書かれた、化学プロセス機器、石油精製機器に生じる不具合に対するトラブルシュウティングのためのガイドブックである。
筆者が経験したトラブルを、筆者自身が読者に語りかける形で、その発見の経緯、事故原因究明のプロセスを記述している。トラブルは、蒸留トレイの不具合、空気冷却器の不具合など、---34項目に分類されている。筆者は46年の化学プラントの運転、設計、トラブルシューティングに従事し、年20数回のトラブルシューティングに関するセミナーを行っている。本書は県立川崎図書館に所蔵されている。
書名:Basic Electricity prepaed by the Bureau of naval Personal Dover Publications Inc. 1970年刊 490頁
Basic Electricity prepaed by the Bureau of naval Personal
本書は米国海軍の軍人を含む職員のために書かれた電気全般にわたり、やさしく書かれた解説書である。第1章に電気に関連する「安全」を持ってきているのも、一般の参考書とは異なる。電気の基本原理、蓄電池、直流直列回路、並列直流回路、直流回路のネットワーク解析、電導体と結線要領、------とつづく。文字サイズは小振りでハンドブック風にびっしり詰まっているが、図が多いので、分かりやすい。本書は県立川崎図書館に所蔵されている
書名:Materials for Engineers and Technicians 5th edition Raymond A. Higgins著 Newnes発行 2010年刊
Materials for Engineers and Technicians
米国には本書のように“Material”の語がつく参考書は多い。日本の“工業材料”という本の範疇に入ろうか。同じような趣の本は日本にもあるが、本書は明快な多くの図を載せて、わかりやすく理解させようとする心遣いが感じられる。主な内容は、各種金属の特性、試験方法のほかに、各種製品の製法がイラスト入りで説明されている。プラスチック、ゴム、ファイバー補強材など非金属も含まれる。図版が魅力的でページを繰っていると、いつのまにか本の中に引きこまれてしまう、というような本である。
書名:Why Building Fall Down Levy and Salvadori著 W.W.Norton発行 1994年刊 ペーパブック
Why Building Fall Down
本書は配管技術の参考書ではないが、構造力学に興味のある人なら、知的好奇心をそそられる読み物風の本である。1925年のB-25爆撃機が悪天候による視界不良でエンパイアステートビル79 階に突っ込んだ事故(ビル全体に及ぶような被害はなかった)から、2001年9月ハイジャックされた757旅客機がワールドトレードセンタービルを倒壊させるまでに起きた、世界の建造物の倒壊事例を紹介し、その模様とその原因を手書による大きな絵を随所に織り込みながら、興味深く説明する。
書名:Fundamentals of Piping Design Advanced Piping Design
          Peter Smith, Rutger Botermans著 Gulf Publishing発行 2007年刊
Fundamentals of Piping Design Advanced Piping Design
配管設計のエッセンスを2冊にまとめた初級用参考書。第1巻は各種code,標準,仕様、配管の構成要素、配管材料、製造・組立・据付・試験検査、に関する解説。第2巻は配管レイアウトの要領で、機器配置、ポンプ・熱交換器・コンプレッサ・塔・クーリングタワーの機器まわりの配管ルートと、安全弁、パイプラックの配管ルートの要領を解説している。
書名:Mechanics of Materials Timothy A. Philpot著 Wiley発行 2011年刊 767頁
Mechanics of Materials
極めて実践的な材料力学の参考書である。全編の大部分を例題と演習問題で占める。こういうと、取っつきにくい本のように思われるかもしれないが、カラフルな図が豊富で、一見すると図鑑のようで、分かりやすく、かつ、楽しく学べる感じで、日本の材料力学の参考書のイメージとはだいぶ異なる。米国の参考書は、買った人が本を開きたくなるような、楽しく学べるような本にすることに、注力しているように思われる。
本書の扱う内容は日本の材料力学の本とほぼ同じである。
書名:Ludwig’s Applied Process Design for Chemical and Petrochemical Plants A.Kayode Coker著 GPP発行
Ludwig’s Applied Process Design for Chemical and Petrochemical Plants
第4版2007年発行の本書は大判で996頁のボリュームがある一方、非常に丁寧に精緻に、そして濃密にできており、本書タイトルの分野を集大成した感(“寄せ集め″という感もしないではないが)がある。本文の内容は、プロセス計画、経済評価、液体と気体の物性値、流体の流れ、ポンピング、機械式分、液体の混合、真空化装置、安全装置。
Appendixには、多種類のプロセスデータシート、詳細な物性値、などを掲載。化学プラント、石油精製プラン
トに携わる技術者が座右に置いておきたい1冊であろう。
書名:What Went Wrong 5th edition Trevor Kletz著 BH出版 2009年刊 608頁
What Went Wrong
化学及び石油化学プラントの事故事例と再発防止策について解説。従来2分冊であったものを1冊にまとめた。ヒヤリハットから大事故まで、極めて多彩な事例を39の範疇(章)に分けて紹介している。図が随所にあり、読みやすい体裁をしている。なぜ起きたか、どうすれば防げるか、説明されているので、化学及び石油化学プラントに従事する技術者はもちろん、発電などの他のプラントに従事する技術者にも多くの示唆を与えてくれるだろう。
近刊紹介 「想定外を想定する未然防止手法」 を読んで
                   吉村達彦著 日科技連発行 2011年 9月刊 165頁 2600円
想定外を想定する未然防止手法
本書は、当協会45周年記念誌で紹介した、トヨタ式未然防止手法の著者が最近著した本である。2011年3月11日の 東日本大震災以降、「想定外」が流行語のようになっており、本書のタイトルにも使われているが、本書の内容は“想定外”のことは書かれていない。本書の対象が開発設計が主体であり、その場合、想定外のことを考えるのは当然のことであるからである。量産品でない大型の機械の設計は開発設計に準じると言っていいだろう。
 このような設計においては、原設計(或いはベース設計)と新設計の差を比較することが特に重要視される。デザイ、ンレビューにおいていくつかのCAD画面を同時に比較でき、レビュアーが自由に画面を動かしながら議論できる形が提唱されている。即ち、ベース設計、新設計、差異を検討するワークシートの3つの画面が同時に見られるようにすることが好ましい。
また、デザインレビューをする前に変更点リストを作り上げるのでは、見落とされる変更が出てくる。そこで筆者は「変更点日記」をつけることを提唱している。これは、ベース設計を元に変更を考えたとき、その変更点、変更理由、心配点の3つを備忘録の形で書き留めてゆくものである。尚、本書ではデザインレビューに使う変更点リストは、DRBFMワークシートという名で呼ばれているが、そのフォームが掲載されているので参考になろう。
 本書に、「デザインレビューエキスパートの心得10箇条」というのが出ているので、紹介しておこう。1.もの(技術)に厳しく、人には優しく、褒めよう。2.付加価値をつけて設計者を助けよう。3.設計者の説明を最後まで聞こう。4.設計者の気づきを引き出す質問をしよう。5.設計者の考えていない領域に視点を広げよう。6.その場で決着をつける努力をしよう。7.謙虚に振舞おう、8.客先のためにデザインレビューをしていることを忘れない。9.(実際に使われた)結果を見て、レビューの成果を真摯に振り返ろう。10.実際に使われて生じた不具合はすべて頭に入れておこう。
 まだまだ、参考になることはたくさんあるが、紙面の関係で、ここまでとし、興味のある方は本書を直にひも解いて戴きたい。
尚、タイトルにあるGD3は、Good Design(差の見える設計)、Good Discussion(ワイワイガヤガヤ)、Good Dissection(現地現物) のことである。
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